「植田正治のつくりかた」 (磯村)
2013年 12月 22日
生誕100年の記念展とのこと。
植田のモノクロ写真は非常に絵画的である。
そして美しい。
有名な、鳥取砂丘で撮られている家族写真など、うっとりとするほどに美しい。
背景を極限まで単純化して、そこに一列に並んだ家族がそれぞれのポーズを取っている。
娘は花を持った手を横に伸ばし、植田は幼い息子を肩車し、もうひとりの息子は横を向いて、妻は和服姿である。
砂に突きたてられた蝙蝠傘や傍らに置かれた子供用の自転車。
雑誌発表時には、撮影に出かけたときのことを書いた娘の綴り方が一緒に掲載されたという。
その文章の一部も掲げられていたが、写真をさらに興味深くしていた。
土門拳などは、写真はありのままの姿を捉えるべきだ、としてリアリズムを追求した。
しかし、植田はあくまでも”写真らしさ”を追求した。
彼は、撮られる人にカメラを意識させたという。
撮られるという意識でカメラと向き合った対象を捉えたのだろう。
ダリのように具体的なものの相関関係が非日常的で、マグリットのように構成的である。
パンフレットの表紙には「子狐参上」が使われていた。
狐の面をかぶった少年が跳び上がった一瞬を捉えている。
少年の周りだけは現像処理で明るくしているようだ。
妙な言い方だが、非現実的なリアリティがあった。
by akirin2274 | 2013-12-22 11:18