東京国立博物館での横尾忠則「寒山百得展」。
中国の奇僧である寒山と拾得であるが、横尾はこの二人をモチーフにした油絵を101点描いた。
その全作品を一堂に集めて、拾得ならぬ百得としたのが今回の展覧会とのこと。
会場に入って驚く。なんと勝手気ままに描いた絵が並んでいることか。色は乱れ、形は崩れ、破天荒なお祭り気分である。
寒山拾得の二人は、本来はひとりが巻物をもうひとりが箒を手にしていたはず。
しかしこの展覧会の二人は、トイレットペーパーと電気掃除機を手にしているのだ。
二人はドン・キホーテと従者に扮したり、掃除機にまたがって空を飛び、便器を服にしてしまったりしている。
このシリーズについて、アンディ・ウォホールは「絵の線がぐちゃぐちゃなのは涅槃をポップにしているからではないか」と言ったそうだ。
絵には作成された日付が入っているのだが、作品は1日おき、2日おきに描かれ続けている。毎日毎日描いたのだろうな。
寒山と拾得は融合してひとりになってしまったりもする。一体化してしまったふたり。
そして、最後にはAI:ロボットになってしまった二人だった。行くところまで行ってしまったか。
ついにここに到達してこのシリーズは終わっていくのかと思った。しかしまだあった。
「四睡図」は禅の真理、境地を示すとされているが、ここの四睡図にはアイン・シュタインがいたり、お釈迦様がいたりするのである。
さらになぜか「ランボー」と題されたシリーズがあり、アルチュール・ランポーはもちろんのこと、江戸川乱歩、エドガー・アラン・ポーが出てくる。ついにはスタローンのランボーまで出てくるのである。
50号ほどもある大きな油彩画101点をわずか1年ほどでとにかく描きまくったわけだ。
絵の美しさとか技量とか、そんなものはもううち捨ててしまったところで描かれている。自分はなにを描きたいのかをひたすら追求している様に思える。
横尾忠則は今年で87歳になるはず。この生命力には感嘆あるのみ。