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「幻影の書」P・オースター (瀬崎)   

「幻影の書」P・オースター (瀬崎)_c0138026_8272533.jpgポール・オースターの「幻影の書」は、語るという行為が何重にも重なり合っている小説であった。
それにしたがって、いくつもの語られるものも重なり合いながら読者に提示される。

小説は主人公について語り、主人公はある幻の映画作家のことを語り、その映画作家が描いた映画の内容について語る。
主人公の人生と、その映画作家の人生と、映画に描かれたいくつもの人生が、互いに重なり合ったり、まったく離れたところにあらわれたりする。

映画作家が亡くなろうしていて、その妻の意志によってすべての映画フィルムが消却されようとしている。
形を取っていた物語は消滅しようとしている。
主人公は、顔の半分に痣のある案内人の女性に連れられて、消却される前のフィルムを観に行こうとする。

案内人の女性の顔の痣に隠されていたものはなにだったのだろうか。
フィルムに描かれていた物語はどこへ行こうとしたのだろうか。

ポール・オースターは映画「ルル・オン・ザ・ブリッジ」の監督でもあるし、映画「スモーク」の原作者でもある。
すごい物語の、すごい語り手だ。

by akirin2274 | 2009-04-11 08:28

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