人気ブログランキング | 話題のタグを見る

吉増剛造氏を囲む会 (瀬崎)   

吉増剛造氏が全国の小学校で授業をするという公的な企画があったらしい。
教員をしている小山淳志氏が応募したところ、企画が選ばれて吉増氏が岡山県の小学校へ来ることになった。
折角の機会なので、ということで、その前夜に岡山在住の有志が集まって吉増氏を囲む飲み会を開いた。

秋山基夫氏が、吉増氏の紹介をするということで戦後詩を俯瞰するような視点での吉増氏の立ち位置を10分あまりにわたって話した。

吉増氏には実質的にははじめてお会いした。
どんな方なのだろうかと思っていたのだが、私の向かいに座った吉増氏は廻りの人にとても気を使う繊細な方であった。

皆さんの声が聞きたいとの吉増氏の要望で、参加者の何人かが自作詩を朗読した。
私もいつも持ち歩いている推敲原稿の中からほとんど手を離れかかっている作品「中庄三丁目」を朗読した。
読み終わると、岡山の詩人はすごいねと言って吉増氏が握手をしてくれた。
しかし、彼は誰の作品でも褒めてくれているのだった。優しい、のだか、残酷なのだか。

2時間近くが経ち、もうこれで帰るよと言って、吉増氏も自作詩を朗読した。
詩集を片手にやおら後ろ向きになって、相対した部屋の壁を爪でがりがりと引っ掻きながら朗読を始めた。
驚いた。そうか、こんなことだったのか。
途中では手の平で壁をばさっと、ばさっと叩いたりもした。
そうか、吉増氏にとって朗読とはこんなことだったのか。

私などは詩を書いたり読んだりしているときだけ詩人になるのだが、吉増氏は存在そのものがすべて詩人だった。

by akirin2274 | 2016-11-26 22:05

<< 中島みゆき「夜会」 (磯村) 映画「秋の理由」 (瀬崎) >>