至福のとき (瀬崎)   

c0138026_18114674.jpg須永紀子編集/発行の詩誌「雨期」は毎号読みでのある内容である。

その「雨期」の今号の特集は、アンケート:あなたにとって至福の時は?
直球そのものの質問で、かえってみんなどんなことを答えているのだろうと興味を引かれる。

たとえば、阿部日奈子は「長風呂」。湯につかりながら送られてきた同人誌を読むという。う~む、のぼせてしまいそう。
「ビールなんてものはね、」と題した北川朱実の回答は、東海林さだおのエッセイをネタにしている。北川は毎晩彼のエッセイを読んでいる?

私は仕事に追われていて24時間じゅう緊張していたころのことを書いた。ホノルル・マラソンに行くぞっと、すべての連絡手段を遮断して出国ゲートをでたときの開放感のひととき、あれが至福の時だった。

実はもうひとつ私にとっての至福の時があった。
仕事が忙しくなって詩の世界から15年あまり遠ざかっていたときに、なぜか、旧い知人から同人誌の立ち上げに誘われたのだ。
私も何を思ったのか、その同人誌「堕天使」に参加することにした。

その知人以外とは初めて会う同人予定の6人は、東京、京都、大阪在住だった。
そこで彼らとの顔合わせで、恵比寿ガーデンで飲んだのだ。風のない暖かい夜だった。

その夜、ああ、こんな風に詩を書く人たちと過ごす世界があったのだ、と思ったのだった。
それは長く忘れていた世界だった。仕事に追われていた日常からは全く切りはなされた世界だった。
理論ではないものが価値を持ちうる世界の甘い毒を感じてしまったひとときだった。

そして、その夜から、私は詩の世界に戻ってきてしまったのだった。
私はなぜ詩を書くのだろうと自問するとき、いつも、あの夜を経験してしまったからだ、という声が聞こえてくる。


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by akirin2274 | 2018-03-09 18:13

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