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「トレチャコフ美術館展」 (磯村)   

「トレチャコフ美術館展」 (磯村)_c0138026_21243609.jpg岡山県立美術館でのロシア・トレチャコフ美術館所蔵展。渋谷Bunkamuraから巡回してきている。
タイトルは「ロマンティック・ロシア」で、19世紀後半の写実的な絵画72点が展示されていた。

「ロマンティックな風景」と題された1章は、春夏秋冬に分けての風景だった。
いずれも写実的な風景画で、作家は知らない人ばかりだったが、その技量には感嘆してしまう。

ここまで美しく風景が描かれていると、思わず写真のように描くことの意味は何だろうとさえ考えてしまう。
19世紀半ばといえば、帝政ロシアの時代で、ドフトエフスキー「罪と罰」、トルストイ「アンナ・カレーニナ」が書かれた頃。寒く荒涼とした時代を連想するのだが、それはこちらの勝手なイメージなのだろう。

第2章が「ロシアの人々」、第3章が「子どもの世界」で、様々な人物画描かれていた。
ここに今回の目玉である”ロシアのモナリザ”といわれている「忘れえぬ女」が展示されていた。
黒い帽子に黒い衣装の女性が幌を下ろした馬車の席からこちらを見下ろしている構図。
よく観ていると、その下瞼が太い女性の視線は何か怖ろしいものを見ているのではないかと思われてくる。

展示されている作品はすべてロシアのものだった。
解説を読むと、かって所蔵していた海外作品はプーシキン美術館、エルミタージュ美術館へ移管して、今はロシア美術のみ20万点を所蔵しているとのことだった。なるほど。

つづく「都市の風景」「日常と祝祭」でも当時の人々の生活が描かれているのだが、やはり画面に捉えられた以上は、それは”物語”であるわけだ。
画家がその光景にどのような物語を感じて描きとめたのか、そして観る人はそこにどのような物語を描くのか。

絵は明暗が形づくる形と色で表現する。しかし、言葉で表現しようとすると、どうしても説明の要素が入り込んできてしまう。これは厄介だなあ。


by akirin2274 | 2019-04-30 21:26

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